自分をオープンできる相手 ひとりでもいるということは
大事なことですね。
ひとりで抱え込まないで。

以下 引用させていただきます。

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不登校経験なし50歳の専業主婦がある日突然マイホームにひきこもった深刻な理由

2018/08/09 11:30 AERA dot.

「家事手伝い」「主婦」という肩書きがあるがゆえ、内閣府の統計から漏れていた女性のひきこもり。その実態が、当事者団体である「ひきこもりUX会議」の調査で明らかになった。回答した143人の女性うち、既婚者は4人に1人。中でも、専業主婦(配偶者と同居し、収入がない人)がひきこもるようになった原因は、コミュニケーション不安(81%)、精神的な不調や病気(75%)、家族以外の人間関係(66%)だった。

 マキコさん(仮名、50歳)もひきこもり主婦の一人。高校卒業後に就職し、職場で出会った男性と29歳のときに結婚。趣味があり、持ち家に住む “ふつう”の生活が一転したのは4年前だった。孤立、認められたい……彼女が夫にさえも言えなかった思いとは。不登校新聞の編集長、石井志昂さんが聞いた。

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――マキコさんがひきこもり始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

 風邪をひいたのがきっかけでした。

――えっ!? 風邪ですか?

 直接のきっかけとしては風邪だと思います。

 ただ、いつもの風邪とちがったのは鼻づまりがひどかったことです。経験したことがないような鼻づまりで息をするのも苦しく、眠れなかったんです。

 お医者さんからは「後鼻漏(こうびろう)になっているが、そのうちに治る」と。でも完治する前に鼻で炎症が起きてしまい、1カ月ほど、匂いを感じることができなくなりました。シャンプーやコーヒーの匂いさえわからず、食べている物が腐っているのかもわからない。もともと匂いに敏感なほうだったので、最初にパニックになってしまったのが、このときです。

 お医者さんに、もう一度、症状を訴えると今度は強めのお薬が処方されました。その薬の影響なのか、今度はなにを食べてもすごくしょっぱい。味覚がおかしくなってしまったんです。

 風邪だったのが、それがこじれてしまって、日々、眠れないし食べられない。1カ月間に5キロ以上も痩せてしまい、このまま死ぬんじゃないか、とだんだんと精神的にも追い詰められていきました。

――どんな状態になったのでしょうか?

 日中、部屋のなかでも寒けを感じて震えたり、夜中、家のなかを徘徊せずにはいられなかったりしました。一日中、体が鉛のように重く、家事はもちろん通院以外の外出もできなかったです。

 とにかくやる気が起きなんです、なにに対しても。おフロにも入る気になれないし、身だしなみを整える気にもなれないので、髪はいつもボサボサ。

 だんだんとネガティブなことしか考えられなくなり、「笑う」こともほとんどなくなりました。

 考えていたのは、まず、なにもできなくなった自分を責める気持ちです。それから、療養のために親元に戻ったため「こんな年になってまで親に迷惑をかけて」という罪悪感や「こんな自分は夫と別れなきゃいけない」という焦りも強かったです。

 眠れずにいた晩に「もうダメだ、人生が終わってしまった」と感じて首を吊れる場所を探したこともあります。

 風邪をひいてから数カ月で、一気にそういう状態まで追い詰められてしまったんです。

――「風邪がきっかけ」という話は初めて聞きました。自分の状況を受け入れるのに時間がかかったのではないでしょうか?

 私もまさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。いろんな病院にも行きましたが、「ストレスですね」と言われるばかりで、自分の身に何が起きているのか、病気なのかさえもわからなかったです。

 その後、いい先生にめぐり合えて「うつ病」だと診断されましたが、それでも受け入れがたいものがありました。

 というのも、私は不登校もせず、ふつうに学校へ通っていました。高校を卒業してからは10年ほど働き、職場で出会った夫と結婚しています。子どもはいませんが、主婦になってからはスポーツクラブに通い、趣味もありました。スポーツクラブでは新しい友人もでき、家以外の居場所もあったと思っていたんです。

 それが風邪をきっかけにして、自分のなかに溜め込んでいたものがバーンと弾けてしまったんでしょうね。

――溜め込んでいたものとはなんだったのでしょうか?

 大なり小なり誰しも抱えているものはあると思いますが「他人に言えないこと」が私にもやっぱりありました。

 5年間、不妊治療をしていたことは他人には言えないことでした。不妊治療は30代後半から40代にかけてのときです。不妊治療は保険外の治療なのでお金もかかりますし、「次こそはできるかもしれない」と思うとやめられませんでした。

 やっとの思いであきらめましたが、いまでも隣近所の子どもたちを見るとつらいものがあります。

 不妊治療も他人に言いづらいことです。私だけじゃなくて、他の人たちも隠れるようにして診察を受けていました。

 いま住んでいる自宅は義父の勧めで買った一軒家です。自分たちがほしくて買った家ではないため、愛着がわかず、夫も家のことには無関心でした。まわりには同じような年代の家族が住んでいますが、子どものいない私は近所付き合いもできず孤立していました。

 だから誰にも言えず、自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいたんだと思います。

 私が病んでしまった理由は、苦しい気持ちや寂しさを誰かに認められたかったからだと思うんです。夫はいつも仕事が忙しく、ご飯もいっしょに食べていませんでした。すれちがい生活の孤独を埋めるために、あえて趣味に没頭していたのかもしれません。

――マキコさん自身のうつ病やひきこもりの苦しい期間を抜けるために必要なことはなんだったのでしょうか?

 主治医からは「すべてを受け入れなさい」と言われています。でも、これが難しいんです(笑)。

 病院通いを始めたころ、主治医からは「家事をしようと思わなくていいから休みなさい。なにもしないことのほうが勇気がいるんです」とも言われました。そう言われて初めて「自分のことだけを考えればいいんだ」と思えたのが、私にとってのスタートラインでした。

 自分を否定せず、自分自身を大事にしながら、散歩をして、読書をする。不満を感じていた両親や夫に対しての感情もだんだんと変わっていきました。

 風邪をこじらせて親元へ行き、自宅に戻ってきたのが今年の5月、2カ月前のことです。いまでは家事ができるのもありがたいなと感じています。ひきこもりの当初は、一日があまりに長く感じていましたからね。

 それから、ブックレット『ひきこもり女子会』(発行/ひきこもりUX会議)を読んだのも私にとっては大きな変化でした。ひきこもっている女性、ましてや主婦のことについてはネットでもほとんど情報がありません。ブックレットには実際の当事者が体験を書いていて、私の支えになりました。

“ふつう”の主婦が一転、ひきこもりに。自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいた理由とは(※写真はイメージ)© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 “ふつう”の主婦が一転、ひきこもりに。自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいた理由とは(※写真はイメージ)
――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂)

■マキコさん(仮名)略歴

 50歳女性。高校卒業後、就職。職場で出会った男性と1996年に結婚。2014年に体調不良を機にひきこもりが始まる。ひきこもり歴は現在に至るまで4年。夫と二人暮らし